静脈麻酔と全身麻酔は何が違う?医療脱毛で使われる麻酔の違いを専門医が解説

医療コラム



「静脈麻酔と全身麻酔ってどう違うの?」「脱毛で使う麻酔は危なくないの?」
そんな疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。

とくに、最近話題の「全身麻酔で脱毛できるクリニック」では、痛みを感じずに施術が終わるという快適さが注目される一方で、「本当に安全なの?」「どんな麻酔を使っているの?」といった不安の声も聞かれます。

この記事では、麻酔科医の立場から、静脈麻酔と全身麻酔の違いをわかりやすく解説し、医療脱毛における麻酔の実際について正確な知識をお届けします。


静脈麻酔とは?

静脈麻酔(Intravenous Anesthesia)は、点滴ルートから薬剤を投与し、意識を鎮静または消失させる麻酔方法です。

使用される代表的な薬剤には、以下のようなものがあります:

  • プロポフォール
  • ミダゾラム
  • レミマゾラム

静脈麻酔は、内視鏡検査やインプラント、親知らずの抜歯など、外来処置にも広く使われている非常に身近な医療技術です。

ただし「静脈麻酔=意識がなくなる」というわけではなく、投与量や目的により意識が残る「静脈鎮静(Intravenous sedation: IVS)」の範囲にとどまることもあります


全身麻酔とは?

全身麻酔(General Anesthesia: GA)は、意識消失・鎮痛・筋弛緩・反射抑制などを伴い、手術に必要なレベルの深い麻酔状態を指します。

この全身麻酔は、次の2つの方法で行われることがあります:

  • TIVA(Total Intravenous Anesthesia: TIVA):静脈からの投薬のみで管理
  • 吸入麻酔薬:セボフルランなどの揮発性麻酔ガスを使用

全身麻酔に該当するかどうかは、「投与経路」ではなく、「深さ=生理的抑制の程度」によって定義されます。


違いは“麻酔の深さ”と“生理機能の抑制レベル”

静脈麻酔と全身麻酔の最大の違いは、意識・反射・自発呼吸などの生理機能がどこまで抑制されるかにあります。

比較項目静脈鎮静(IVS)静脈麻酔(TIVA)全身麻酔(GA)
意識部分的に保たれることあり完全に消失完全に消失
痛みの反応軽減消失消失
筋弛緩なしなし~軽度あり(必要に応じて)
呼吸自発呼吸あり自発呼吸あり/補助あり自発呼吸抑制・人工呼吸あり得る
管理医師医師(推奨:麻酔科医)麻酔科医による厳格な管理

つまり、静脈麻酔=軽い麻酔と誤解されがちですが、実際には静脈投与であっても、全身麻酔レベルの深さを得ることは可能です。


医療脱毛で使われるのはどっち?

渋谷三丁目クリニックで導入しているのは、原則としてTIVA(静脈麻酔)による全身麻酔管理です。

以下のような特徴があります:

  • プロポフォールで入眠し、笑気やペンタゾシン、フェンタニル、レミフェンタニルなどの鎮痛薬を併用
  • 施術中は完全に意識がなく、痛み・音・匂いなどの刺激を一切感じない
  • 酸素投与・SpO₂・EtCO₂・心電図・血圧などをリアルタイムでモニタリング
  • 麻酔科専門医が常時在室し、患者の安全を管理

これは、「静脈麻酔=軽い麻酔」と思われがちなイメージとは大きく異なり、事実上、手術と同レベルの麻酔管理体制と言えます。


なぜ“全身麻酔脱毛”と呼ぶのか?

「静脈麻酔で薬を入れるだけなら、全身麻酔じゃないのでは?」と思う方もいるかもしれません。

しかし、当院で行っているのは完全に意識が消失し、疼痛反応も極力遮断された深度の麻酔状態であり、定義上も「全身麻酔(general anesthesia)」に該当します。

  • 寝ている間に全身+VIO+ヒゲも一気に照射可能
  • 痛み・羞恥心・時間的ストレスを一切感じない
  • 目覚めたらすべてが終わっている

こうした特徴が、「全身麻酔脱毛」=“次世代の快適な医療脱毛”として注目されている理由です。


まとめ|“静脈麻酔”と“全身麻酔”は矛盾しない

静脈麻酔と全身麻酔は「別物」ではなく、「重なり合う概念」です。

  • 静脈麻酔=薬の投与経路
  • 全身麻酔=麻酔の深さと生理機能の抑制度

したがって、静脈麻酔によって全身麻酔の状態を作り出すことは医学的に正確であり、当院ではそれを安全に実施しています

「脱毛=痛くて当然」と諦めていた方も、「麻酔=怖い」と感じていた方も、正しい知識を持つことで新たな選択肢が広がります。